読書日記(3/3-3/16)

3/3

ゆっくり読み進めていた『穏やかな死者たち:シャーリイ・ジャクスン・トリビュート』(エレン・ダトロウ編)を読み終わった。深緑野分による解説でも触れられているが、シャーリイ・ジャクスンっぽさと言えば底知れない悪意や不条理(「くじ」)、語り手のゆがんだ視点(『ずっとお城で暮らしてる』)、屋敷といった建造物に魅入られてしまう様子(『丘の屋敷』)などが思い浮かぶ。様々な作家たちがジャクスンのエッセンスを取り入れながら書いた作品を読んでいると、「あ~シャーリイ・ジャクスンのこういうところ、私も大好き!!」と叫びたくなってくる。

特に気に入った作品たち…「弔いの鳥」(登場人物たちの嫌な感じがかなりジャクスンっぽい)、「所有者直販物件」(建物の魔力に惹きつけられる様子がいいし、シスターフッドを感じる)、「柵の出入り口」(ちょっとウルフの『オーランドー』っぽい)、「スキンダーのヴェール」(奇妙だけど少しあたたかみも感じるファンタジー

3/7

書店で川野芽生の『Blue』を見かけたので買った。トランスジェンダー女性である主人公が、「この世には私のことを語る言葉がないのでは?」という疑問をSNSに書く場面が印象的だった。認識的不正義に関する議論が示したように、言葉がないと誰かの経験や構造的な差別を話し、共有し、そのおかしさを訴えることが難しくなる(e.g. 「セクシュアルハラスメント」)。シスジェンダーが支配的なこの世界において、トランスジェンダーの人々の経験を語る言葉は不均衡に少ない。まだそれをぴったりと表す言葉が(浸透してい)ないからといってそれはなかったことにならないのに。

3/10

中学生くらいのときに読んだ『魔女の死んだ家』(篠田真由美)を図書館で見つけたので再読した。この本は「ミステリーランド」という児童向けレーベルのうちの一冊で、一時期このレーベルの作品をよく読んでいた。今振り返ると、綾辻行人二階堂黎人太田忠司小野不由美など執筆者たちの豪華さに驚く。

凝った装丁も魅力的だ。背表紙にはそれぞれ異なる色の布が使われていて、ハードカバーの表紙のタイトルは箔押しになっており、見返しには少しレトロな香りのする幾何学模様があしらわれている。今になって読み返してみると、子どもたちへ手加減なくおもしろいミステリーを届けようという大人たちの気概がうかがえてぐっとくる。

3/11

おもしろさとかなしさは案外近いところにあるものなんだな、と赤染晶子のエッセイ『じゃむパンの日』を読んで思う。手袋を編もうとしたら最終的に右手を4つ編んでしまう話と、貸衣装屋へ婚礼衣装を選びに来た新婦を試着室ではげます話が特に好きだった。

3/16

恩田陸の『スキマワラシ』。結局「スキマワラシ」がなぜ、どうやって現れるようになったのか?といった疑問は残るものの、爽やかな読後感で嫌いじゃなかった。ぼーっとしているようで要所要所ではちゃんと活躍する雑種犬ジローとナットがよかった。