2023-01-01から1年間の記事一覧

読書日記(12/1-12/20)

12/1 人からすすめてもらった『個人的な体験』(大江健三郎)をようやく読み切る。女性であり主人公(鳥)の性的対象である火見子とかつて鳥が見捨てたゲイの菊比古が完全に鳥の成長、というか未熟さへの決別のための道具として配置されており、いっそすがす…

読書日記(10/29-11/16)

10/29 友だちが何か本をプレゼントしてくれるというので、シャーリイ・ジャクスンの『くじ』をリクエストした。冗談半分ではあっても他人の家で我が物顔に振る舞う人(「おふくろの味」)、自分の満足のために孫や子どもの才能をひけらかそうとする人(「麻…

読書日記(9/9-10/24)

9/9 『天冥の標 3 アウレーリア一統』(小川一水)。生業や気質・体質、性愛のあり方などの点で物語中のマイノリティである《酸素いらず(アンチ・オックス)》たちが剥き身で宇宙の海賊たちを狩っていくスペースオペラで、今までのところ、シリーズで一番わ…

読書日記(8/7-8/21)

8/7 人に小川洋子が好きだと話したら彩瀬まるの『くちなし』をすすめられた。たしかに、さまざまな体の部位への偏愛や、何かを喪失することのさみしさを淡々と描いている点は似ている気がする。一方で、『くちなし』では全体的に異性愛的な結びつきに焦点が…

読書日記(6/29-7/27)

6/29 ダイアナ・ウィン・ジョーンズの遺作『賢女ひきいる魔法の旅は』をようやく読み切った。本作は途中からDWJの妹のアーシュラ・ジョーンズが引き継いで書いた作品らしい。DWJは2011年に亡くなったのだが、今後もう絶対に新しい作品が生まれないということ…

読書日記(6/4-6/21)

6/4 澤村伊智の『邪教の子』を読む。「カルト信者の母親から虐待を受けている子どもを助ける」という、わかりやすい上に刺激的で美しい「物語」。少なくとも初めの段階ではその「物語」をほぼ疑わず、むしろ喜んで飲み込んでしまうような読者の露悪的な部分…

読書日記(5/9-5/23)

5/9 今回の『NOVA 2023年夏号』は全作品が女性作家による書き下ろしらしい。特に「プレーリードッグタウンの奇跡」がよかった。作中では、短い音にいくつもの意味を載せられるプレーリードッグの警告音によって思考が速くなることが示唆されている。こういう…

読書日記(4/2-4/20)

最近読む本のジャンルや傾向が固定されつつあります。自分で選ばないような本も読みたいなーと思うので、もしよければおすすめの本を教えてください。時間はかかるかもしれませんが読んで読書日記に書きます。 moyoにマシュマロを投げる | マシュマロ 4/2 ホ…

読書日記(3/18-4/1)

3/18 シャーリイ・ジャクスンの作品にはなんとなく幻想的で陰鬱な作風のイメージを持っていた(始めた読んだのが『ずっとお城で暮らしてる』だったからだと思う)ので、『なんでもない一日』を読んでその幅広さに驚いた。「レディとの旅」や「喫煙室」みたい…

読書日記(2/24-3-12)

2/24 松浦理英子の作品は2人の女の関係を描くイメージが強かったので、『最愛の子ども』で3人の関係性が出てきたのは新鮮だった。 女子高校生3人が擬似家族(パパ、ママ、子ども=王子様)として強く結びついていること、それと対照的に実際の家族や男子クラ…

読書日記(2/12-2/22)

2/12 恩田陸『チョコレートコスモス』を読み切る。恩田陸の作品はページ数こそ多いものの、どんどん読み進めさせる力があるのですぐ読み終わってしまう。 ガラスの仮面も恩田陸も好きなのにこの作品を見逃していたのは不思議だ。あとがきでガラスの仮面のよ…