読書日記(2/9-2/29)

2/9

北見隆の表紙に目を引かれて借りてきた『たまご猫』(皆川博子)を読む。日常の隙間に存在する不条理へ、ふと飲み込まれてしまう怖さ。不条理の怖さもありつつ、人同士の情念の怖さもある。性と死は強く結びついているんだな~とぼんやり思った。あと、どの短編も鮮明に映像を喚起されるような文章で、それがまた怖さと美しさをはらんでいた。

2/12

沢村貞子が26年間にわたって書き綴ってきた献立日記を抜粋しつつ食に関するエッセイも収録された『わたしの献立日記』を近所の書店で買った。個人で営業されている小さな書店なのだが、私の好みっぽいけど私の本棚にない本が絶妙に置かれており、ときどき立ち寄ると楽しい。

献立日記のはじめの方は夕食のみを記録していたようだが、途中から朝食・昼食(「おやつ」と表記)・夕食と三食きっちり書かれている。俳優として活躍しつつここまでしっかりごはんを作り、記録していたってすごいな。意志の力だ。

最近、生活を自分のために心地よくして、さらにそれを維持していくにはつくづく意志とエネルギーが必要だなと思うことが多い。一人暮らしだと特に制約がないため、私は「楽だが心地よくはない」という状態に流れがちだ。別に悪いことでもないしそれしか無理なときもあるけど、多少がんばって心地よくした方が気分がいい。そういうわけで、最近はときどき自炊をするようにしている。

このところ参考にしているレシピ本たち。
『ズボラさんの作り置き』(いち):5種類程度の作り置きを並行して作ろうというコンセプトの本。一回がんばれば4,5日はごはんのことを考えずに済むのでありがたいのだが、並行して作るのにものすごく認知資源を使うので疲れる。慣れもあるのかもしれないが。

『基本調味料で作る体にいいスープ』(齋藤菜々子):スープとごはんで一食が完結すれば楽だな~と思って買ってみた。いろいろなテイストのスープが載っており、眺めているだけでも楽しい。具だくさんにしたいので、合いそうな野菜を勝手に加えたりしている。この前作ったタラとじゃがいものチャウダースープがおいしかった。

2/13

図書館で人気の本を予約すると忘れた頃に確保できたという連絡が来て、突然のプレゼントみたいでうれしい。柚木麻子の『オール・ノット』が手元に来たので読んでいる。オール・ノットは"all not"ではなく"all knot"。主にパールのネックレスを作るときに使われる技法で、ネックレスの一部がちぎれてもパールがばらばらにならないというもののようだ。

2/25

今度読書会に参加するので、課題本『大どろぼうホッツェンプロッツ』(プロイスラー)を読んだ。小学校の図書館には必ずおいてある本だしかなり見知った表紙なのでこれまでに読んだことがあるものと思い込んでいたのだが、もしかすると今回が初読かもしれない。でも私はけっこう前に読んだ本だと内容をきれいに忘れていたりするからもしかすると何回か読んだことあるかも。この世にはおもしろくてまだ読んだことのない本が大量にあるので新しい本をどんどん読んでいきたいのだが、おもしろくてもするすると内容を忘れていく場合、読むことに意味はあるのだろうかと思ってしまう。だからこういう日記をつけているんだろうな。

2/29

書店で開催されていたフェアでおもしろそうだった『図書館の魔女 第一巻』(高田大介)をようやく手に取る。第一巻は主に登場人物と世界観の紹介に紙幅がさかれており、まだ物語は大きく動いていない。第二巻以降も楽しみだ。数多くの言語に通じ、本に埋もれて仕事をしつつ国の政略的な駆け引きにも長けている、偏屈で聡明なマツリカ。もっと小さな少女だった頃に読んだら致命的に影響を受けていた気がする。