読書日記(9/9-10/24)

9/9

『天冥の標 3 アウレーリア一統』(小川一水)。生業や気質・体質、性愛のあり方などの点で物語中のマイノリティである《酸素いらずアンチ・オックス》たちが剥き身で宇宙の海賊たちを狩っていくスペースオペラで、今までのところ、シリーズで一番わくわくしながら読んだ作品だ。

アダムスと、大主教であるデイム・グレーテルとの掛け合いがよかった。途中までデイム・グレーテルは高齢であるため判断能力のないお飾りの大主教であるかのように描かれていたが、アダムスとの戦闘の中でかつての俊敏さや優秀さを発揮する。第1巻(メニーメニーシープ)でも思ったのだが、天冥の標では一見無害でステレオタイプ的な描かれ方をしているキャラ(例えばユレイン3世の側女であるメーヌやカランドラ)も、物語が進むとその奥にある強さが見えてきておもしろい。

9/17

最近移動中に少しずつ読み進めていた『増補新訂版 アンネの日記』(アンネ・フランク)を読み終わった。自分のためだけに自分の生活や感情について整理して書く・書きながら整理するという行為は、癒しになり得る。時として、誰か気心の知れた人に話すより、自分一人でノートに書き連ねた方が楽になることがあると思う。さらに、書くことの機能はただ気持ちを整理して癒されるだけに止まらない。手を動かして書いているうち、それまで気づかなかったような感情に行きあたることがある。日記を書くことで、自分でも知らなかった自分の気持ちや希望に気づくことができるのではないだろうか。

9/21

この前、お手紙リレーという、住所や本名を明かさずに誰かとリレー形式で手紙をやり取りするという企画に参加した。私の書いた手紙が誰かに届き、その後また別の誰かから手紙が届く。友だちから教えてもらって今回初めて参加したのだが、メールとは違って手紙となると、どんな便箋を使おうか、どんなペンや万年筆で書こうか、など悩むことが増えて楽しい。 

『ツバキ文具店』(小川糸)(こちらも別の友だちから勧めてもらった)では、鎌倉で文具店かつ代書屋を営む主人公がさまざまな依頼者の手紙を代筆することになる。その際、相手との関係や伝えたい内容に応じて使う便箋や筆記具、筆跡までもが選び抜かれる。例えば、長年の友人との絶縁状には固い決意を示すために羊皮紙が使われるし、自分の文字の汚さに悩む人が送る誕生日カードにはその人の人柄を表すような筆跡が選ばれる。文章だけでなく、それを書く道具や文字そのもの、またそれらを選ぶ過程・手間も含めて相手への贈り物になるのだと思う。

9/22

『ポストコロナのSF』を読んだ。「黄金の書物」(小川哲)の語り口がよかった。

10/24

途中まで読んで放置していた『天冥の標 4 機械仕掛けの子息たち』(小川一水)をようやく読み切った。

ついこの前、シャーリイ・ジャクスンのトリビュート『穏やかな死者たち』が創元推理文庫から出版された。『不思議の国の少女たち』などの作者であるショーニン・マグワイアも参加しているらしいので楽しみ。

リクエスト募集

もしよければおすすめの本を教えてください。時間はかかるかもしれませんが読んで読書日記に書きます。

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