読書日記(5/19-6/13)

5/19

ふとショートショートが読みたくなって、図書館で『安全のカード』(星新一)を借りてきた。星新一は作品が古びた印象を帯びないようにあえて登場人物の名前や具体的な時代・場所・金額などをぼやかしている(無徴にしている)んだと思うのだけど、多くのショートショートで主人公が男性であることもその一種なんだなと思う。この社会で男性以外のジェンダーはデフォルトではなく有徴化されているから、性別が何でもいいような作品で「あえて」男性以外のジェンダーを主人公に据えることは「ノイズ」として捉えられるのかも。

5/20

旅行中にレイ・ブラッドベリの『とうに夜半を過ぎて』を読む。

旅行に持って行く本の基準
・ページ数が多い(途中で読み終わって退屈しないように)
・文庫本(持ち運びやすいように)
・できれば短編集(移動時間など細切れに読むから)
・文章が美しく、密度が高い(万が一読み切っても何度も読み返せるように)
・比較的新しく、入手しやすい(紛失しても買い直せるように、汚れても惜しくないように)

5/29

比嘉姉妹シリーズの最新巻『すみせごの贄』(澤村伊智)が出ていたので買う。切り口や題材が鮮やかでどの作品もおもしろかったけど、そろそろがっつり姉妹が活躍する長編も読みたくなってきた。

6/3

『紙の月』(角田光代)は高校生くらいのときに一度読んだことがあるのだが、突然読み返したくなったので再読した。今読むと、横領を繰り返してまで散財した梨花が一番お金に執着していないように見える。梨花が銀行で働いてお金を稼ぐことで「稼ぎ手としての自分の優位性が揺らぐのでは?」という恐怖を持ち、梨花と自分の経済力の差を誇示するように振る舞う夫の方がよほどお金(というか、「夫は妻より稼ぐべき」という規範?)への執着が強いのではないか?お金に執着しているからお金を使ってしまうのではなく、お金は究極的にはどうでもいいものと思っているから湯水のように使えるのだと思う。お金は循環するもので、究極的にはどこにも属していないという感覚。

6/13

アンソロジー少女小説とSF』(編 日本SF作家クラブ)。少女小説もSFも大好きなのでタイトル買いしてしまった。スピンがリボンになっているところとか、細部にまでこだわりが感じられる装丁も好き。

SF色が強いものからBLっぽいもの、ホラー・サスペンス風味の強いもの、ジェンダー流動性が鮮やかに描かれているものまでバラエティ豊かでおもしろかった。中でも特にひかわ玲子の「わたしと「わたし」」が一番印象的だった。みんな双子で生まれることが普通の惑星に一人きりで生まれてしまった少女が主人公なのだが、少し不穏なラストも含めて好みだった。二人の「わたし」が莫大な財と頭脳、底知れない邪悪さで宇宙を跋扈するスペースオペラが読みたいな~。